初秋の風
半袖の腕や素足に夕風の冷たく感じられる頃…私は そんな今の季節が1年で一番好き 夏の喧騒からリセットされ ふと淋しくなって そして なんとなく優しくなれて… 少女の頃 詩集をよく読んだ。 今もこの季節になると口をついて出てくる詩がある。
夕風 高田敏子
夕風に コスモスの花がゆれ
垣根のそとを 口笛が流れてゆく
すばやく過ぎていった夏よ
私の胸のどこかに 熱いまなざしをやきつけたまま
素足に 風の冷たい 秋
この詩に出逢ったから この季節が好きになったのかも知れない… コスモスの花言葉は「調和・善行」 この花の日本名が「秋桜」だと知った時の感激を 今も覚えている。 高校生の頃 バス通学をしていた。隣町まで山と谷を超え、片道1時間の道程… 谷合の畔道が 9月の終わりになると コスモス色に染まる。 薄桃色 桜色 紅色 薄紫… ほんの微風にも たゆたゆと揺れる様に 都会への憧れと将来への不安をかかえた自分の心を 重ね合わせていた。 私は あの頃の夢を 実現できたのだろうか 子育てを終えてもアナウンサーとして忙しくさせてもらっている今の幸せを噛みしめる。 ちなみに 私が高校を卒業した年の春 なんと隣町へのトンネルが開通! 片道15分の快適な道路。 あれ以来全く通らなくなったあの谷合… 少女の頃の心の風景に会いに いつかもう一度出かけたてみたい